これはトゥーザ・ヴァッキーノさんの『プレゼント』のふろくです。
カトーは、泣いた。そして走った。 泣いて泣いて、走って走って、そしていつもの公園のベンチに一人座った。 でも、カトーの肩はまだ泣きじゃくっていた。悲しかった。悔しかった。そして、恥ずかしかった。 精一杯勇気を奮い立たせて、押した同級生の家のチャイム。 そのチャイムを押すまでに、何度もためらった。家の前を行ったり来たり、何度もやっぱり帰ろうかと思った。 最後にようやく決心して押した。胸がドキドキ高鳴る。そして玄関で、声を、いや勇気を振り絞って言った。 「あたしも仲間に入れて!プ、プレゼントも持ってきたよ。」 悲しくもそんなカトーの気持ちは友達には受け入れてもらえなかった。 「どうしたの……?」涙でグショグショに濡れた顔を上げると、綺麗なお姉さんが立っていた。 お姉さんは、そっと寄り添うようにカトーの横に腰掛けた。「こんな所にいると風邪引くよ。ほら、もうこんなに暗くなってきた。」お姉さんは優しくハンカチで顔を拭いてくれた。微かな消毒液の匂いがした。 カトーは、自分のこと、友達のこと、ついさっきの出来事を全部なにもかも話した。オルゴールを投げつけて走って来たことも。 お姉さんは、優しくじっと聞いてくれた。知らない人なのに、知らないお姉さんなのに、なぜか胸のつかえをはき出すようにカトーは一気に話した。 「そう、それは辛かったね、とっても悲しかったね」そう言いながらお姉さんは、カトーの頭を優しく撫でてくれた。 「私ね、ほらそこの病院で、働いているの。」公園の向こう側に見える大きな病院を指さした。 「今日は、夜勤でこれから出勤するところだったのよ。」「お姉さんは看護師さん?」「うん。そうだよ。」 そして、お姉さんはこんな話をしてくれた。病院には、とっても苦しんでいる患者さんが沢山いて、クリスマスイブでも、痛い注射や苦い薬を飲まなくてはいけないこと、から揚げやケーキも食べられず、お家に帰ることもできない子どももいること。etc・・・ そして、最後にまるで独り言のようにこんなことを話した。 「心の痛みはね、傷つけられた方だけじゃなく、傷つけた方にも必ず残るものなのよ。今はわからないかも知れないけれどね。」 その時のカトーには、よく意味が理解できなかった。 でも、不思議と心が落ち着いていた。さっきまでの激しい感情は消えていた。 「さぁ、帰らなきゃ本当に風邪引くわよ。」お姉さんが立ち上がった。カトーも立った 「そうだ、これあなたにプレゼント」そう言うとカバンの中から少しさめかけたから揚げを出して 半分くれた。「残りは、私の夜食よ。お仕事頑張らなきゃね。」そう言うとスタスタと歩いていった。 ほんの少し消毒液の香りを残して。 その後、大人になったカトーが看護師になったのは今さらいうまでもないことだろう。。。 ここからつとむュージアムさんの『続きの続きのプレゼント』へ行っても面白いかも、とおもうのですが。。。
by haru123fu
| 2010-11-25 16:45
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Comments(6)
そうそう、カトーはきっとこういう気持ちだったんでしょうね。
わかるなあ。わかるわかる。 こういう気持ちになった人じゃないと、なかなかこの描写はできませんね。 って、どんだけ唐揚げリスペクトだあぁぁ! しかも、唐揚げの正体を知ってるだけに、この唐揚げも、もしかしたら もしかして・・・・・・なんて思っちゃう~。。。 いやはや、リンクしてますねえ(合言葉みたくなってますネ)
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haru123fu at 2010-11-25 20:41
♪♪ ヴァッキーノさんへ
この企画、なんだか唐揚げがキーワードになってきましたね。 ヴァッキーノさんのお宝倉庫『プレゼント』があってこそですよね。 皆さんすごいですよね。ビックリしてしまいます。そして、楽しんでます。 でも、クリスマスまでには、まだ約一ヶ月あります。 どう進むのでしょうか? そして、どんな結末が待っているのでしょうか?? スリルとサスペンスへ?それとも優しいホームドラマへ? ワクワク、ウキウキで~す。 親愛なるヴァッキーノさんのドロボーより
またひとつ素敵なドラマが。
haruさんは、お話のスポットライトを当てる人物がいいですねぇ。そういうところに優しいお人柄が出るんだと思います。 haruさんのおかげで僕も(きっとヴァッキーノさんも)自由に泳がせてもらえます。ありがとうございます! それにしてもさらなる展開が楽しみですねぇ!ワクワク
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haru123fu at 2010-11-26 06:41
♪♪ 矢菱虎犇さんへ
来週の月曜、病院の検査結果待ちで、現在自宅軟禁中です。 どっかへ、遊びに行きたくてウズウズしていたのですが、虎犇さん のおかげで、こんな楽しみ方があることを知って超ラッキー! 心に翼をもらえた感じです。私には奇跡が起きたみたいです。 『最後の一葉とオルゴール』虎犇さんから ステキなクリスマスプレゼントをいただきました。 本当に感謝です。そして、ワクワク、ドキドキで~す。
こんばんは。
ふろくまで書いちゃうなんてすごいですね。 カトーさん、タイムスリップして来たんですね。 幼い自分に「大丈夫だよ」って言いに来たんですね。 こんな風にお話が繋がって行くのって、本当に楽しいです。
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haru123fu at 2010-11-27 10:52
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