ゆっくり生きる

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それは秘密です <ショートストーリー>

f0227323_8381426.gif定年退職した私は、妻の鬱陶しそうな目を避けるため山歩きを楽しんでいる。
それは、登山といえるほどの高い山ではなかったが、
ときおり吹き抜ける風と木々のざわめきや、木漏れ日、
楽しげにさえずる小鳥の鳴き声。
都会の喧噪から逃れ、
ひとときの憩いの時間を過ごすことができる場所だった。

今日も、いつものように身支度をして、山道にはいった。
小一時間ほど歩くと天狗橋にさしかかる。
天狗橋を遠目に見ながら近づいていくと、橋の中ほどになにかがうずくまっているのが目にはいった。
遠目では、良くわからなかったが、橋のたもとに着いたときには、それはしっかりと見えた。

全身が浅黄色で、手足のようなものがある。子どもぐらいの大きさだ。
ピクリとも動かずにうずくまったままじっとしている。
「宇宙人か?」と、私は思った。怖いもの見たさとは、この時の私だった。

ゆっくり、そろりそろりと近づいていった。
私に気づかないのか、それともケガをして動けないのか、私がすぐ横に立っても動かなかった。

私は自分でも思いがけず、大胆にも人差し指でちょっとつついてみた。
すると、顔を上げ、「み、水!」とだけ言って、またがっくりとうなだれた。
「に、日本語だ!」私は驚いた。宇宙人が日本語を話したのだ。

いや、たまたま日本語に似ていただけかも知れない。
だが、私が急いで水筒の水を差し出すと、少し飲んで、残り全部を頭にかけた。
そして深いため息をつき「あー、助かった!」と言った。

間違いなく日本語だ。「日本語がわかるのかい?」とたずねてみた。
すると、「わかるもなにも、おいらはあんた達人間よりもずっと前からここに住んでいる。
いやー助かったよ。ありがとな!」と言うではないか。

「そうか、もうはるか昔にUFOが故障して、それ以来日本で、仲間の助けを待っていたのか……。」
私はこの異星人に同情を禁じ得なかった。

「それで、UFOは、どこにあるんだい?」異星人は、たぶんと思うのだが、不思議な顔をして、
「あんた、さっきからおかしな事を言うが、おいらは河童だよ、知らないのか?河童を。」
「あはは、バカバカしい!河童は空想上の生き物じゃないか。
それにしても君は、実に河童の絵によく似ているなぁー。」
「だから、おいらは河童だと言ってるじゃないか。」

「いやーそれはないな。宇宙人なら存在していると思うが、河童は無理だろう。
たぶん、君は墜落のショックかなにかで宇宙人だと言うことを忘れて、
自分は河童だと思いこんでいるのではないだろうか?」

「うぅ~ん……?!」自らを河童と名乗るこの宇宙人も腕組みをして、
しばし考えているようだがなかなか思い出せない様子だ。

「君は、今はどこにすんでいるのかね?」
「ああ、この川の上流に河童沼ってのがあるのを知っているか?」
その沼なら何度か行ったことがあるので私は知っていた。
「この前の大雨で、恥ずかしながら、激流に流され、気がついたらこの橋の上で、
頭の皿がひからびかけていたのさ。いや~面目ない。」河童は、恥ずかしそうに言った。
「いやいや、大丈夫さ、河童の川流れって言葉があるぐらいだから。」

なぜか、私と河童と名乗る宇宙人は妙に気が合い、天狗橋の欄干にもたれて、少しばかり世間話をした。
「ああ、いけない!ついつい話し込んで、また頭の皿が乾いてしまう。
「今日は、ありがとよ!」そう言うと河童と名乗る宇宙人は橋から川に飛び込んで、
川の上流に向かってスイスイと泳いでいった。
途中で振り返り、「河童沼にいるから、いつでも遊びに来い。」と私に大きな声でそう叫ぶと、
見事な平泳ぎで帰って行った。

家に戻った私が、妻や息子にその話をすると、大笑いされた。実に不愉快だった。
尚かつ、まちがっても二度とそんな話をするなと、釘をさされた。

以来、私と河童と名乗る宇宙人は、まるでお互い無二の親友のように、かれこれ十数年の付き合いとなるが、
誰もそのようなことには気がつきもせず、もちろん、私も誰にもそのことを話したことはない。
そして、多分彼の故郷である星からも、迎えのUFOはいまだ現れていない。
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by haru123fu | 2011-04-03 09:16 | 勉強中 | Comments(11)
Commented by 佳(Kei) at 2011-04-03 09:41 x
か、カッパさんは信じてもらえないなんてぇ〜(#/__)/ドテ
私もカッパさんを名乗るウチュウジンに会いたいです!!
Commented by haru123fu at 2011-04-03 09:57
♪♪ 佳(kei)さん。おはようございます。
こんな風に自分の考えを絶対に曲げない実直なおじさんって、
いますよね。
いくら、本人が自分は河童だと言っても。(笑)
河童も、そんなおじさんだからこそ、仲良しになったのだと思うのです。

ところで、マルやん、とってもかわいいですね~o(*^▽^*)o
Commented by もぐら at 2011-04-03 12:45 x
こ、これは・・・。
もしかして 実話?
おじさんとか言ってるけど 本当はharuさんのことだったりして。
haruさんならこんなお茶目なところ ありそう~。(^-^)
Commented by haru123fu at 2011-04-03 16:07
♪♪ もぐらさん。
>こ、これは・・・。もしかして 実話?

あああ、実話かもしれませんねー!!(ノ∀`)・゚・。 アヒャヒャヒャヒャ
ただ、ちょっと、もぐらさんの勘違いを訂正させていただきますと、
私は、おじさんではなく、河童の方だったのです。

実は、もぐらさん。。。これは絶対に秘密ですが、私は河童なのです。
うそなう← ヴァッキーノさんのまねっこ
Commented by 矢菱虎犇 at 2011-04-03 17:09 x
ボクの読みでは,
これはホンモノの河童と見せかけて、実は河童みたいな宇宙人。
イヤイヤ、場所が場所だけに、河童みたいな宇宙人に見せかけた、河童みたいな宇宙人みたいな天狗。
イヤイヤ、実は、河童みたいな宇宙人みたいな天狗に見せかけた宇宙人!
しかしてその実体は、河童みたいな宇宙人みたいな天狗に見せかけた宇宙人に見せかけた河童!!
・・・河童か~い!!
Commented by haru123fu at 2011-04-03 19:17
♪♪ 矢菱 虎犇さん。
(ノ∀`) アチャー!! 虎犇さんのコメント自体がショート・ショートに
なってるー。矢菱虎犇さん、完全復活ダー(◎´∀`)ノバンザーイ!
ところで、コイツはなにものだったのでしょうか?
あ、書いたのは私だった。(忘ー!)
Commented by ヴァッキーノ at 2011-04-03 20:07 x
河童って、なんとも面白いですね。
宇宙人と河童の会話ってのが斬新です。
しかも人間の入る余地のないところで友好関係を築き上げてしまう。
新しいですね。
Commented by 海野久実 at 2011-04-03 20:58 x
haruさん、最近快調ですね。
立て続けに面白い作品を読ませてもらっています。
この作品、始めの方で主人公がどういう人か描写があった方がいいと思います。
はじめはharuさんが主人公かと思って、若い女性をイメージしてましたが、河童との会話で急に中年のおじさんになっちゃいました。

>自分の考えを絶対に曲げない実直なおじさん
いますいます。
そうかー、そのノリですね。
そういうおじさんて、自分の間違いにふと気が付いたとしても、認めたくないと言うか、最初の思いつきでごり押ししちゃうんですよね。
Commented by haru123fu at 2011-04-04 11:25
♪♪ ヴァッキーノさん。
風邪はすっかり良くなりましたか?
ヴァッキーノさんは、どちらが実在すると思いますか。
宇宙人か、はたまた河童か。それとも天狗。。。

私は、頑固者なので、自分で見たものしか信じません。
ただ、幽霊だけは時々見るのですが、
誰にも言わないようにしています。(ノ∀`)・゚・。 アヒャヒャヒャヒャ
Commented by haru123fu at 2011-04-04 11:35
♪♪ 海野 久実さん。
そうですよね。ご指摘いただいて、気づきました。性別、年齢。
自分の思いこみで、書くとそうなるんだなぁ~!そこが抜けていました。
的確なアドバイスに感謝です。勉強になります。


>はじめはharuさんが主人公かと思って、若い女性をイメージしてました

(o^-^o)ククククッ!ウレシイーなぁ~!っていうか、そういう
問題ではありませんでした。(反省)でも…超ウレピー!



Commented by curatortome at 2017-02-19 13:29
おもしろいんでないかい