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視線/ショートショート

f0227323_171955.gif二人は坂道を登っている。岬へと向かっているのだ。
晴れ渡る青空、爽やかな風が時々二人を包むように優しく吹いている。
二人は楽しそうに話をしている。久しぶりのデートだった。
「ねえ、こんなにお天気が良いと海が綺麗にみえるでしょうね。」
「ああ最高だよ!」そう答えた男が突然後ろを振り向く。
「どうしたの?」「いや別に……。」
誰かが彼らを見ているような視線を感じて振り向いたのだ。

視線を感じる。あなたもそんな経験がないだろうか。
でも、振り向いても誰もいない。周りを見回してもだれもいない。
なのに、視線を感じる。大抵は「なんだ気のせいか」と思うだろう。

やがて二人は岬の先端に着いた。
青い空と白い雲、眼下にはそれは綺麗な青い海原が広がっている。
「二人で見るとこの景色は格段に綺麗だね。」男が言った。
「お天気が悪くても二人だと綺麗かしらね。」女が独り言のように言った。
男は振り向いていた。また視線を感じていたのだ。

女は切り立った崖を覗き込みながら、
「怖いわ、こんなに高いところから落ちたら絶対に死んじゃうよね。」
女の声で、男は我に返り、どれどれと言いながら身を乗り出すように崖下を覗いた。
その瞬間、女は身を翻して男の背中を押した。悲鳴とも叫びとも言えるような声を上げ、
男は落ちていく、落ちていく……。そして静かになった。

女はにやりと笑った。「私を裏切ったむくいよ。」
その直後、まるで慌てふためいた泣き声のような声で女は110番通報をした。
「早く、早く来てください、彼が、彼が足を滑らせて……。」
男が感じていたのは、視線ではなく女の殺気だったのかもしれない。

おわり
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by haru123fu | 2012-09-08 17:12 | ショート・ストーリー | Comments(14)
Commented by harumimi1121 at 2012-09-08 21:11
haruさんのショート・ストリー久々ですね~。
やっぱりサスペンスタッチが良いですね。
読んでいてテンポも良くってとっても楽しめました。
Commented by curatortome at 2012-09-08 22:48
あたしゃてっきり、作者のharuさんの殺意ある視線かと思ったよ。
でなかったら、刺激を求める読者の冷酷な期待の視線かな、と。
Commented by haru123fu at 2012-09-09 08:46
♪♪ harumimiさんへ
ホント、久しぶりです。何か書くと暗かったり人を殺してしまったりと、
あまり楽しい話が浮かばないのです。
早い話が文才が無い!(ーー;)

harumimiさんにはいつもいつもありがとうございます。(__)ペコリ!
Commented by ヴァッキーノ at 2012-09-09 08:55 x
視線じゃなくて、殺気だったんですね。
この男は、女の殺気をいつから感じていたんでしょう?
たぶん、さっきからでしょう。
なんつって。
Commented by haru123fu at 2012-09-09 08:55
♪♪ Tome館長さんへ
ふむふむ、そんなふうにお話を展開していくと、ショートショートらしく
なるんですね。あ、メモ、メモ。。。
なにせ、物忘れがひどくてねー!(^_^;)
Commented by haru123fu at 2012-09-09 08:58
♪♪ ヴァッキーノさんへ
ご明察!そうなんですよ。さっきから感じていたんですね。(笑)

目に見えないものを感じる人間の第六感って、意外に当たってたりして。
Commented by 春待ち りこ at 2012-09-09 11:53 x
人を振り向かせるほどの殺気って。。。
相当なものですよね。
いったいこの男。。。何をしてしまったんでしょう。。。
くわばら。。。くわばら。。。

haruさんのSS
久々に楽しみました。
面白かったです!!!ありがとっ♪
Commented by 海野久実 at 2012-09-09 13:58 x
男が感じていたのは、視線ではなく女の殺気だったのかもしれない。
いや、そうではなかった。
女が来た道を振り返ると、一人の男が立っていたのだ。
その近さからすると、今、女が取った行動を逐一見られていたのは確実だった。

なんてなー
始めの方に女が男をつき落とす伏線みたいなのがあるといいかも知れませんね。
二人の関係をうかがわせる何気ない描写ね。


ヴァッキーノさんのコメントがharuさんのコメントと全く同じ時間ですねー
>目に見えないものを感じる人間の第六感
感じてねーじゃん(笑)
Commented by haru123fu at 2012-09-09 16:04
♪♪ 春待ち りこ
それはもちろんジェラシーでしょうね。
井上陽水さんも、♪愛の言葉はジェラシ~♪とか歌っているでしょう。(笑)

それにしても、毎日空ばかり見ていると、SSがまったくと言って思いつきません。
まずは、なんでもいいから書いてみるかなぁ~なんて。
読んでくれて、おまけにコメントまで、ありがとうです。(;_;)カンゲキ!
Commented by haru123fu at 2012-09-09 16:18
♪♪ 海野久実さんへ
あ、ホントだ!私がTome館長さんへコメントしている時に、ヴァッキーノさんが
私にコメントをくれている。私自身は、第六感どころか、五感も乏しい。(^^;

>女が取った行動を逐一見られていたのは確実だった。
怖い!なるほど。。。これは完全犯罪どころか、連続殺人事件の始まりに過ぎなかった。

海野さんそろそろ何か書いてください。私が朗読出来る程度の短い作品を
お願いします。なるべく間違わないように努力しますから。(__)ペコリ!
Commented by 海野久実 at 2012-09-09 17:09 x
今日はさっきからツイッターでいろいろ書いてます。
かなりいいリハビリになっている気がします。
タイムマシンネタですよ。
Commented by haru123fu at 2012-09-09 18:21
♪♪ 海野久美さんへ
見てきましたよ!なんかリハビリ順調そうですね。
楽しみにしています。
Commented by 矢菱虎犇 at 2012-09-09 18:33 x
日常の中に潜む、説明のしようもない不安の欠片。それが増殖して人のカタチとなって背中を押す・・・結局、得体の知れなさほど怖いものはありませんねぇ。
Commented by haru123fu at 2012-09-09 19:16
♪♪ 矢菱虎犇さんへ
理解できない、納得できない、自然の驚異。
昔の人はそんなものに怖さを感じ、神様を作り出したのでしょうね。
だから月とか太陽が神様になっていったのかなあなんて。

自分で自分の背中を押すときは、良い方向に向かうように押したいものです。
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