特殊任務 <ショート・ショート>

f0227323_8521534.jpg総司令官より、直々に特殊任務が与えられた。
私はこの任務を遂行すべく、特別な教育と訓練を受けていた。
いよいよ実践だ。まずは潜入捜査である。
そしてヤツを見つけ、これを確実に確保する。
私には自身と誇りがある。精鋭部隊の中でもその注目度は高い。
無事任務を果たすべく、私の単独潜入捜査が始まった。

総司令官は、私が身につけた超小型カメラの映像を通して、私に指示を与える。
少しでも早くヤツを見つけなければならない。

ぬめぬめとした、細く長い通路がつづいている。私は怯むことなく進んだ。
ここを抜けると、少し広い空間にでた。ヤツはここにいると私は直感した。

「うぅーん。ヤツはどこだ。」私は、恐ろしくジメジメとして、周りは通路と同じようにぬめぬめとしている。
この空間で、身をよじるように必死で、ヤツをさがした。ヤツは必ずここにいるはずだ。
すると、突然私の目の前にイガイガとしたどす黒いかたまりが、現れた。

「うむ?誰だ!お前は。」そいつはいぶかしげに私をみる。
司令官が叫ぶ「そいつだ。そいつを捕まえろ!」
「私は、お前を捕まえるためにやって来た。」
「へへーっ!俺を捕まえるだと?お前みたいなヤツが俺を捕まえるだとぉー。」
そいつは、イガイガしたどす黒い顔で、俺をあざ笑った。

「俺は、ここが居心地いいのさ。おいそれとお前なんかに捕まるものか。」
「そうは、いかない。俺が来たからには、もうお前の自由にはさせない。」
ヤツは俺が特殊武器を装備していること知らない。
俺は司令官の命令どおり、特殊武器を使いヤツを確保した。
後は、いま来た通路を通り抜け、司令官にヤツ引き渡せば任務は終わる。

「奥さん。ご主人の胃のポリープは、無事摘出できましたよ。」
「先生、ありがとうございます。」
「ほら、思った以上に大きくなっていましたよ。早期発見できてよかったですね。」

内視鏡は、無事にその特殊任務を遂行した。
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# by haru123fu | 2011-03-06 09:02 | ショート・ストーリー | Comments(8)

札幌は猛吹雪/昨日の天気

           札幌が冬将軍に襲撃された。
           久々のすごい猛吹雪。
           思い切って窓を開ける。
           一瞬にして冷たい風と雪に襲われる。
           慌てて窓を閉めて退散だ。
           傍観者を決め込んで、荒れ狂う外を見る。
           なにかが動く。スズメだ!
           あの小さな身体で冬将軍に体当たりしていく。
           勇敢な戦士に見えた。
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           午後2時過ぎ、気がつくと嘘のように空が晴れた。
           大きな太陽と青空までが顔をだしている。
           冬将軍は悔しそうに、空の下で真っ黒な雲になり、
           照れくさいのか、山のふりを決め込んでいる。
           冬将軍と命をかけた戦いにスズメが勝った。
           燃えるような夕焼けが、今度は冬将軍を襲撃だ。
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# by haru123fu | 2011-03-05 10:33 | 今日のわたし | Comments(4)

夢から覚めると <ショート・ショート>

私は夢を見ていた。それはとても恐ろしく不思議な夢だった。

私は、近未来の日本にいた。そこは、完璧なほどに治安が保たれ、
平和で、貧富の差もなく、誰もが分相応に安泰に暮らしている。

政治には、与党も野党もなく、衆議院も参議院もなかった。
あるのはただ一つ、テレサと呼ばれるコンピューターのある巨大な建物と、
それを守る特殊任務に選ばれた人間が数百人。
テレサは、日本の抱える諸問題を全て解決し、平和な日本を築きあげていた。

人々には出生時にICチップが埋め込まれ、そこには全ての個人情報が記録として蓄えられていく。
人間は12歳になると、人間としての試験を受けなくてはならない。
試験とICチップによる12歳までの成長記録が、加味されて、人間試験に合格したものだけが、
人間として生きることが許された。
不合格になったものは、奴隷かペットになり、人間に飼われるか、
安楽死を選ぶかの二者択一が決義務づけられていた。

また、人間の死をもテレサが管理していた。65歳になると、その誕生日には、安楽死がまっていた。
人はそれを、テレサからのプレゼントと呼んでいた。
平均寿命さえも決められていたのだ。

今日は私の65歳の誕生日だ。
私はベッドで眠っている。早く目を覚まさなければ、このまま夢を見続けたら、
恐ろしい光景が待っている。

「やめろー!」私は自分の声で夢から覚めた。
あまりに恐ろしい夢に冷や汗をびっしりとかいていた。おかしな夢を見たものだ。

シャワーでも浴びてさっぱりしなければ、夢見が悪すぎる。
そう思い起き上がろうとしたその瞬間、なにかで口をふさがれた。

遠のく意識の中で、こんな声を聞いた。
「おめでとうございます。テレサからのプレゼントを届けにきました。」


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# by haru123fu | 2011-03-04 09:00 | ショート・ストーリー | Comments(13)

春がどこかへ

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                春がどこかへ行っちゃった。
                ずっと、ずーっと待っていたのに。
                やっと、やっと、すぐそこまで来てたのに。
                春がどこかへ行っちゃった。

                ああ、そうか。ちょっと恥ずかしくなったんだね。
                あんまりみんなが待っているから、
                顔をだすのが、ちょっと恥ずかしくなったんだね。

                雪が降る。しんしんと雪が降る。
                最後だよってお別れに。
    

3月3日 お雛まつり
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娘が小学校の高学年になったときから、7段飾りの雛人形は、納戸から出なくなってしまいました。
せめてお内裏様だけでも飾ったらいいのにと、ばあちゃんはよく言ってましたが、
お内裏様を、出すためには、あの大きな箱を、全部出さないとなりません。
特に娘も飾って欲しいとも言わなかったので、そのままにしてたら、
孫が可愛そうに思ってか、こんなお雛様を買って貰っちゃいました。037.gif
なので、もうずっとこれですませています。
私って、ひどい母親でしょうかね。でも、飾るのもしまうのも大騒動で。。。023.gif
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# by haru123fu | 2011-03-03 10:38 | 今日のわたし | Comments(6)

むかし、むかしのお話です <ショート・ショート>

むかし、むかしのお話です。
一つの山を隔てて、西の里村と東の里村という二つの村がありました。

二つの村が行き来するには、山の裾野をぐるりと周り、野宿しながら若者の足でも3日も4日もかかります。
ところが、村を隔てている山の峠を越えると、2日ぐらいで、行き来ができるのです。

でも誰も山の峠越えをする者はいませんでした。
それにはわけがありました。二つの村を隔てる山は、妖怪山と呼ばれ、
峠を越えようとするものは、妖怪につかまりひどい目に遭わされるというのです。

f0227323_1235577.gifある日のこと、西の里村の村人が、はやり病にかかり、
年寄りや子どもが高熱で次々と倒れているとの知らせが、
東の里村に告げられました。もう、西の里村の薬草もつきかけていました。

そこで、東の里村では、なんとか薬草を西の里村に少しでも速く届けたいと思いました。
一人の強健な若者が、自分が妖怪峠を越えて、薬草を届けると名乗りを上げました。

村人は沢山の薬草を用意し若者に持たせることにしました。
若者が出発の準備をしているとき、村の長老がやって来て若者に言いました。
「いいか、峠にさしかかったならば、なにがあっても上を見てはいけない。前を見てもいけない。とにかく自分の足下以外は見てはならない。」そして「誰が話しかけても言葉を交わしてもいけない。」と。

若者は、西の里村をめざし旅立ちました。少しでも早くこの薬草を西の里村に届けようと走りました。
峠は深い山道でしたが、妖怪がここに住み着く以前に、人が旅をしていたと思われる道が残っていました。
ずっと走り続けだった若者は、山頂近くでひと休みをすることにしました。
竹筒の水を飲み、おにぎりを食べているときです。
若者の前に、美しい女が現れ、「後生ですからお水を少し下さいな。」と話しかけてきました。
その美しさは、すがた形ばかりではなく、話しかける声までもが、鈴を転がすような綺麗な声でした。

思わず水を差し出しそうになった若者の頭に、村の長老の話が蘇ります。
若者は、目を閉じ身動き一つしませんでした。こんな妖怪峠に女が一人でいるはずがない。
この世のものとは、思えない美しさ。「これは、絶対に鬼が化けているんだ。」若者は必死に目を閉じ何度も頭の中で繰り返します。
女は、もうのどが渇いて死にそうだと哀れな言葉で、若者に訴えます。
「あーっ、だめだ、だめだ。」聞いちゃいけない。若者は両手で耳をふさぎました。どのくらいの時間がたったのか人の気配が消え、若者は、また走り出しました。

何度もなにかがうごめくような気配や、なにか話しかけてくる声がしましたが、若者の強い意志は、長老の教えをしっかりと守り、ひたすら足下だけを見て、走りつづけ、ついに西の里村に、たった一日でたどり着くことができました。

村では、大喜びで若者を迎え、その勇気を讃えました。
村長は若者に、是非とも自分の娘を嫁に貰って欲しいと頼みました。
そして、娘を呼びました。するとどうしたことでしょう。あの妖怪峠で、出会った美しい娘ではありませんか。

村長の娘は、鬼に拐かされて、働かされていたのでした。
若い男の生き胆を食べなければ鬼は死んでしまうことを、娘から初めて聞かされました。
そして、もう長いこと人が来なくなっていた峠では、若者が鬼の最後の命綱だったのです。
鬼が弱った様子を見て、一目散に逃げ帰って来たというのです。
若者は、もちろん美しいこの娘と結婚しました。

そして、西の里村では、流行り病から村人を助けてくれたお礼に、
いままで、西から昇っていた太陽を、東から昇るように天地の神に祈りを捧げました。

f0227323_12383761.gifむかし、むかしのおはなしです。
そんなことがあって、太陽は、東から昇って西に沈むようになったんですよ。
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# by haru123fu | 2011-03-02 12:48 | ショート・ストーリー | Comments(10)