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それは秘密です その2 <ショートストーリー>

初めての方はこちらから読んで下さいね → 『それは秘密です』

それは秘密です その2 <ショートストーリー>_f0227323_16303137.gifみなさんは、以前に私が、河童と名乗る宇宙人と遭遇したと、
話をしたことを覚えているだろうか。
もちろん、これは、みなさん以外には、まったく内緒のお話である。
なので、くれぐれも他言無用と言うことでお願いしたいのだが。
なぜか妙に気が合いその後も親交を深めていると言うところまで、
確かお話したはずだと思う。

ある日、私は彼と一緒に、彼の生まれ故郷である星を
探してみようと言うことになった。
私は、夏を待って、キャンプの用意をし、彼の住む河童沼で、一晩野宿することにした。
私と彼は、夜を待って空を眺め沢山の星の中から彼の生まれ故郷を探そうという計画だ。

しかし、私は不勉強もあって星には疎く、彼の記憶に頼るほかなかった。
私と彼は、草むらに寝転がって星を見上げた。空には満天の星が輝いていた。
「ところで、君の記憶としては、どっちの方角か判るかい?」
「うぅ~ん。てんで記憶はないんだが、星はとっても綺麗だよなあ。」
「ああ、きれいだね。本当に綺麗だ。」
暫く二人とも無言で満天の星を眺めていた。

河童のような宇宙人が突然、「なあ、あの星からここを見たらどんな風に見えるんだろう。」と言った。
私は、出がけに地球の写真を雑誌から切り取って持ってきていたのを思い出した。

「ちょっと、まってなよ。」リュックから取り出し彼に見せると、なんと彼はとても驚いたように
「ここだよ、ここがおいらの生まれた星だよ!」と興奮するように言うではないか。
「綺麗だろう、この青い星がおいらの故郷さ。」ちょ、ちょっと待て、これは地球の写真だ。

私はとても慌てて、「こ、これは、こ、ここだよ。地球だよ。」と、やっと言った。
「じゃあ、君は宇宙人ではなくて、本当の河童なのかい?」
私の慌てようと言ったら今考えても、吹きだすほどに可笑しかった。

そして、河童はこんな話を話し始めた。
じつはなあ、おいらは本当は人間だったのさ。
一生懸命競争を勝ち抜いて、良い高校、良い大学、そして、大手企業に就職。もちろん結婚もしたさ。
当時は企業戦士とかってもてはやされ、寝る間も惜しんで働いた。
そして、定年退職後はのんびり好きなことして暮らしたいと思っていたのさ。

ところが、仕事一辺倒でなんの趣味もない。毎日家にごろごろしていたら、
女房のやつが、おいらを邪魔にして、いつも不機嫌な顔でおいらを見るのさ。
こんな人生でいいのかなあと、ある日真剣に考えたんだよ。
そして、ふらっと家を出て、あちこち歩き回った。
まあ、格好良く言わせてもらえば、自分探しの旅とでもいうのかね。

そして、いつしかたどり着いたのが河童沼だったと言うわけさ。
そしたら、天狗様が現れ、河童沼の河童が死んでいなくなって、困っていると言うじゃないか。
もしよければ、お前が河童になってこの沼を守ってくれないかと言うんだよ。
おいらは嬉しかったね。
もう世捨て人みたいな暮らしにも飽きがきていたしな。

天狗様に、こんなおいらで良かったら是非にとお願いした。
そうしたら、天狗様が大きな団扇でおいらの身体を扇いだ。
すると、なんとまあ見事に河童に変身さ。
それ以来おいらは、この河童沼を守るという重要な責務を与えられた。
いや~とってもうれしかったねえ。必要とされる人間?じゃなかった、河童になったのさ。

「そ、それは大変失礼した。それならそうと、早く言ってくれたらよかったのに。」
「だから、おいらは河童だと、最初から言っていただろう」と河童は楽しげに笑った。
私もついつられて一緒に大笑いをした。
河童は、私という友人ができて、とても嬉しいとも言ってくれた。

実は、私も彼とよく似ていた。これという趣味もなく、定年退職後は、
私がいつも家にいるのを女房が、疎ましく思っているのも知っていた。
なので、たったひとつの楽しみだった山歩きに、なるべく出かけるようにしていたのだ。

河童は、きっと、そんな私の気持ちを判ってくれていたのだと悟った。
by haru123fu | 2011-05-20 16:50 | Comments(11)
Commented by もぐら at 2011-05-20 18:01 x
haruさん 早い時間だったらすんなり来れました。
PCのどこが悪いかわかったんですが、故障じゃないみたいなんです。
不便だけどしばらくはこのままで行きます。
コメントできないかもしれませんが、いつも来てますよ~。

河童さんのお話 ほのぼのでしんみりですね。
そうそう 矢菱さんのところで2010年9月「河童をさがして」という
作品があります。
こちらの作品とコラボしてるみたいだなぁって思いました。
Commented by haru123fu at 2011-05-20 19:25
♪♪ もぐらさん。いつもありがとうです。
私もいつもお邪魔してますよ~。
たぶんもぐらさんへのアクセス数が夜になると沢山で、
なかなか、入れないのかも知れませんね。
きっと、要領がオーバーするぐらい
もぐらさんが人気者なのではないでしょうかね。
もぐらさんとの出会いに感謝です。(/ ^^)/アリガトネ

Commented by marinegumi at 2011-05-20 20:55
うーん、なんかまだまだ続きそうな雰囲気なんですけどね。
少なくとも、3部作の「中」のような感じを持ちました。
主人公が河童を河童だと認めてしまった事がなんか寂しい(笑)
しかし、河童が元は人間だったとは驚愕の真実ですねー
主人公は実は×××だったー、なんて事もあるかもしれませんね。

扉が開いた。大量の水がほとばしり出た。たくさんの魚やザリガニ。水草などが一緒に落ちて来た。目の前にあったその扉はいつの間にか上にあって、そこから水があふれていたのだ。やがて流れ落ちる水の量も少なくなって来たと思うと、奇妙な鳴き声とともに緑色の塊が落ちて来た。河童だった。河童はしこたま打ったらしく腰をさすっている。どうやら扉は河童沼の底に開いたらしい。

特に数えずに書いたけれど、140より多いか少ないか?ツイッターにコピべして確かめてみますね。

36文字オーバーでした(笑)
Commented by 矢菱虎犇 at 2011-05-21 02:40 x
第1弾は、河童宇宙人のおとぼけショート。第2弾は、定年退職お父さんの哀感シミジミショート。いろんな球種でバンバン来ますねぇ。「必要とされる人間?じゃなかった、河童になったのさ」に笑いました。
ちなみにボクの同僚に『天狗になってる』奴がいますが、きっと天狗様にそそのかされたんでしょう。
Commented by haru123fu at 2011-05-21 11:33
>主人公が河童を河童だと認めてしまった事がなんか寂しい(笑)
これ以上もう引っ張りきれませんでした。(笑)
きゃははは!河童沼の底にも扉が開いたんですね。
宇宙人と言われたり、扉から落っこちたり、河童にも同情すべきでしょうか?
次回は、扉から落ちてきた河童のお話にできるかな?(笑)
Commented by haru123fu at 2011-05-21 11:47
あらら ↑ 海野久実さんへって書くの忘れター!
Commented by haru123fu at 2011-05-21 11:53
♪♪ 矢菱虎犇さん。
>ボクの同僚に『天狗になってる』奴がいますが、
きっと天狗様にそそのかされたんでしょう。

天狗様は、なにを考えているんでしょうね?
人間は、テングになりやすい生き物なので気をつけなくては、
「必要とされる人間で、いなければ」ですよねー(笑)
Commented by ヴァッキーノ at 2011-05-22 08:10 x
やっぱかっぱっぽかったので、
きっぱりかっぱっていってもらえて
かっぱだとはっきりわかってさっぱりしました。

河童が宇宙人じゃないってことでビックリするより、ボクは人間と河童がキャンプしてるっていうシチュエーションにビックリです(笑)

しかも、けっこうオッサン同士だし。
Commented by haru123fu at 2011-05-22 09:07
♪♪ ヴァッキーノさんへ
やっぱり、河童は河童ですよね(笑)
PCが、戻ってくるまであともう少しですね。
ずいぶんとストレスが溜まりませんでしたか?
私は、携帯でUPなんてできないから、
それだけの長い時間を待つなんてできません。
きっと死体のふりして眠り続けるかも?
ヴァッキーノさんは、エライです。

あ、ところで、PCの無いことをいいことに、ヴァッキーノさんの
ところで、やりたい放題で遊んでました。ごめんなさいです。
でも、悪いのは私じゃなく海野さんです。←(すんなり 人のせいにする)
「お主も悪じゃのう ウッヒヒヒ」
Commented by りんさん at 2011-05-22 20:49 x
その1から読みました。
面白かったです。
宇宙人は信じるのに、河童は信じないのが、何ともおかしいですね。
しかも、元人間だなんて。
世捨て人が河童になって、人間と友達になるなんていいですね。
ずっと友情を育んでほしいです。
Commented by haru123fu at 2011-05-23 12:04
♪♪ りんさんへ
返信遅くなりました。ごめんなさい、気が付いてなかった(汗)
りんさんに「面白かった」って言われると嬉しいなあ。
また、なにも思いつかなくなったら、海野さんが言うように
その3を書くかもで~す。(笑)
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